当院で実施している犬の避妊手術のおよそ6割が腹腔鏡を用いて行っています。また猫の避妊手術でも、少しずつですが腹腔鏡を選択されるようにもなってきました(現在は2割くらい)。半数以上の飼い主さまが腹腔鏡を選択される理由は、やはり腹腔鏡手術のメリットにあると思います。そのメリットを以下に書きました。
- 傷が小さい
- 日帰り手術
2つだけ?と思われるかもしれませんが、この2つこそが最大のメリットだと私は確信しています。これまで行われてきた避妊手術は下腹部を切開し、その切開した腹膜(腹筋のことです)から卵巣を体外に引っ張り出して手術をしてきました。臓器を牽引すること、少なからず出血を伴うこと、そして腹膜(腹筋)を連続して切ることは、必ず痛みを引き起こします。また開腹手術でもありますので、少なからず感染症のリスクも伴います(抗生物質は使用しますが)。
一方で腹腔鏡手術では、傷口は5ミリ〜1センチ。また傷口が3つ(カメラ・電気メス・鉗子)必要になりますが、連続して切開しませんので痛みは抑えられます。またお腹の中だけの操作になりますので、感染症のリスクがぐんと下がります。さらに4Kの液晶に動画を写し出して手術を行いますし、臓器を間近までズームアップさせて見れることで繊細で細かい手術を行うことが可能となります。また万が一、出血してしまった場合であっても迅速にピンポイントに出血点を探し出せることも非常に優秀です。
細かく紹介してしまいましたが、要は、“痛みが少ない”、が一番わかり易い表現だと思います。よって、腹腔鏡で行う避妊手術は今は日帰りが可能となりました。日帰りですと、入院ストレスもありませんのでさらに安心ですよね。
下の写真は腹腔鏡手術を行った子の切開部位です。1つの大きさが5ミリです。中央がカメラ、上が電気メス(超音波メス)、下が鉗子になります(またどこかの記事で手術風景をご紹介したいと思います)。また最後に動画を載せておきました。この子は腹腔鏡手術後30分後の様子です。こんなに元気なんです!良いですよね!
松波動物病院メディカルセンター 獣医師 松波登記臣