上の写真はキウイフルーツの滑面ではありません。。。
超音波検査で認められた胆嚢の画像です。正確には、胆嚢粘液嚢腫という病気の超音波画像になります。胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内にゼリー状の粘稠性が高い物質が長い期間沈殿し、胆嚢を拡張させ、非常に硬化させてしまう病気です。胆嚢粘液嚢腫は胆嚢自体にも重篤な炎症や感染を引き起こしますが、実は隣接する肝臓にも悪影響を引き起こす厄介な病気でもあります。
当院でも多くの胆嚢粘液嚢腫の手術をしていますが、第一印象は、「肝臓が・・・ペラペラになっちゃってる」です。胆嚢を摘出する事自体はそこまで難しくはありませんが、肝臓との癒着や肝臓への影響状況を現在進行系で見てしまうと、この病気の本当の怖さを改めて実感するのです。
胆嚢粘液嚢腫は長い時間かけて接着している肝臓(内側右葉と方形葉)へ障害を起こします。正式には、慢性肝臓内胆管炎(慢性肝管炎)という病態を指しますが、肝臓の正常な細胞に対して炎症を引き起こし、さらに壊死を起こします。これを慢性的に起こし続けることで肝臓の壊死も長い期間起こり、肝臓自体が薄く細くなるのです。なので、「ペラペラに・・・」という表現になってしまうのです。
肝臓はいわゆる「沈黙の臓器」と言われています。先述したように「ペラペラに・・・」なっていても症状として出てこなかったり、時には血液検査を実施しても数値に反映されなかったりします。臓器的に言うと、頑張りすぎちゃっている臓器なのだと思います。ですが、その頑張りもいつかは限界が来ます。そのとき、肝臓はとてつもない事態になってしまっていることがあるのです。人間の医療では、肝硬変や肝細胞癌(肝がん)などがこの例えに相当すると思いますが、動物の医療では、それこそ今回の胆嚢粘液嚢腫や肝細胞癌が該当したりするのです。
胆嚢粘液嚢腫自体はリカバリーできたが、肝臓への影響が深刻で慢性的に肝臓の薬を服用しないと肝臓の数字が高くなってしまって吐き気が続いてしまったり、食欲が無くなってしまったり、元気が出ず疲れやすくなってしまったりするのです。
沈黙の臓器として今回挙げさせてもらった肝臓という臓器は、肝臓自体が悪くなっていくより、実は胆嚢が肝臓を間接的に悪くさせてしまう恐れがあるということもお伝えしたく、ご紹介させていただきました。
松波動物病院メディカルセンター 松波登記臣