
犬の病気の中に「胆泥症(たんでいしょう)」という病気があります。これは胆嚢という臓器に老廃物にようなものが蓄積された状態を指しますが、これって本当に病気なのかどうか?を検討していきたいと思います。まず大前提に、7歳以上の犬の3割はこの病気を持っているという有名がデータが存在するのですが、個人的には「病気」と断定しないほうが良いと思います。この胆泥症、英語表記だと「cholestasis」となります。また大まかな分類として、良性胆嚢疾患と悪性胆嚢疾患という分類に分けられます。学問的に。悪性とつくと、『癌(がん)』をイメージしやすいですが、この場合は、癌(がん)ではなく、『悪くなりがちな』と訳したほうがいいかもしれませんね。

ではこの胆泥症ですが、どっちの分類に入るかというと、両方に分類される病気なのです。なんかイジワルな感じになってきちゃいましたね。つまり、良い胆泥症もあれば、悪い胆泥症もある。じゃあそれは何で決めているのか?という質問に対してお答えすると、それは肝機能障害があるかないか、で決められています。肝機能障害というのは、肝臓から出される各種酵素(ALTとかALPとかビリルビンとか)が上昇してしまう病態を指すことをいいます。その肝機能障害が伴う胆泥症は、さっきの分類で言うと悪性胆嚢疾患に分類されます。なので、肝機能障害が伴わない胆泥症は良性胆嚢疾患なので、ほぼ無治療で構わないという見解がほとんどなのです。

私はこのあたりを専門としているので、多くの診察をしていますが、偶発的に胆泥症を見つけたとしてもほとんど治療しません。ただし、先述したように血液検査を行い、肝機能障害を否定した場合に限ります。また当院までセカンドオピニオンで胆嚢を腹腔鏡で切除してほしいという飼い主さまが一定数来られますが、その半数がほとんど良性胆嚢疾患なのですよね。またウルソデオキシコール酸というお薬を飲まれている場合がありますが、そのお薬を継続するか否かの判断は慎重に行いますが、試験的に休薬をしてみて問題なさそうであれば休薬する、という流れでお話することが多いと思います。
今回は「勘違いされやすい胆泥症」というお話でした。胆泥症を見つけたからといって即投薬開始をする必要はなく、しっかり血液検査をしてからその判断はしたほうがいい場合もあります。胆泥症以外にも、「勘違いされやすい」病気はいくつかあるので、またご紹介します。
松波動物病院メディカルセンター
院長 松波登記臣